後遺障害とは
みなさんも、後遺症とか後遺障害という言葉は聞いたことがあると思いますが、漠然としたイメージだけ持たれているのではないかと思います。
法律の考え方は非常にドライで、割り切った形になっています。どういう意味かというと、後遺障害は、身体の一部に欠陥が残ってしまい、治療しても直らない状態になってしまったと考えます。
例えば、腕を切断してしまった場合、切断面は皮膚こそ再生するものの、腕が生えてくるわけではありませんから、完全に元に戻るわけではありません。皮膚が再生しきれば、そこで回復はストップしてしまいます。よくなる限界を迎えた状態で、普通の人に比べて身体に残る不自由を「後遺障害」といい、回復する限界に達した日を「症状固定日」といいます。
脳障害や神経障害の場合、実際には、その後に状況がよくなったり悪化したりということがありうるのですが、予測が難しく、また一進一退でいつまで経っても紛争が解決しないというのもよくないので、同様に「症状固定日」で区切ることになります。
いずれにしても、交通事故に遭ったら、まずは弁護士に相談することをお薦めします。
遺障害等級
後遺障害と一口に言っても、残り方は様々です。どの程度の影響があるかというのを個別に考えると、不公平になってしまいます。そこで、その程度を類型化し、14種類の等級が定められています(後遺障害等級)。そして、各等級に応じて、慰謝料額と逸失利益の割合が決定します。
一番重い1級は、例えば両足をひざ関節以上で失った場合などです。14級は、手の親指以外の骨の一部を失った場合などです。
後遺障害に関する損害賠償請求は、逸失利益と慰謝料、ということになりますが、この後遺障害等級に応じて、金額が算定されます。
逸失利益とは
逸失利益は、後遺障害を負ったために十分な仕事ができなくなり、普通の人に比べ何パーセント収入が少なくなった、という考え方で計算します。
もちろん、本来は職種によって収入の変動幅は異なるはずですが、正確な減少幅は厳密には誰にも分からないので、算定にばらつきが生じてしまいがちです。そこで、等級に応じて、普通の人の何%くらいの収入しかできない身体になった、というルールを決めてしまっているわけです。これは元々は、労災で取り入れられた考え方です。
例えば1級なら100パーセント(全く働けない)、14級なら5パーセントというように、機械的に決まっています。
この割合を「労働能力喪失率」といいます。
この労働能力喪失率を、事故直前の年収(若年だったり専業主婦だったりといった場合は平均年収の場合もあり)にかけて、一定期間(裁判基準では、よほど軽い等級でなければ、67歳まで)分の年収が逸失利益、ということになります。
ただし、単純に、67歳までの年数を年収にかけるわけではありません。中間利息控除という考え方があります。これは、将来もらうはずの収入を今もらうのだから、早くもらう分の利息を差し引きましょう、という考え方です。今はゼロ金利時代ですが、法律の世界では、利息は年5%と決まっていますので、大幅な減額になってしまうのです(ただし、民法改正により利率は変わるの見込みです。)。
例えば、年収400万円だった人が47歳で症状固定し、14級の後遺障害が残った場合、400万円の5%の収入を20年分もらえることになるはずですが、この「中間利息控除」の結果、実際にもらえるのは12.462年分ということになってしまいます。
交通事故における逸失利益算定は難しいので、弁護士にご相談されることをお薦めします。
慰謝料とは
慰謝料も、後遺障害等級に応じて大体額が決まっています。
裁判基準では、例えば1級では2800万円、14級では110万円がベースといわれています(現実のケースで多少のずれはあります)。
この慰謝料は、弁護士が介入する場合としない場合では大きな開きがあるのも事実です。
というのも、任意整理の基準と裁判基準とで、大きな開きがあるのが、この後遺障害の慰謝料の基準なのです。
死亡事故の場合
交通事故で死亡された場合、致命的な欠陥が残ったという意味では後遺障害と変わりなく、逸失利益と慰謝料が問題になります。
ただ、後遺障害と異なるのは、その人が今後生活していくことはないということです。
それ自体、後遺障害より悲しいことではあるのですが、ドライに考えた場合、「その人のための生活費がかからなくなる」ということでもあります。
そこで、逸失利益を考える上では、本人の生活費に相当する部分を差し引くという計算をすることになります。
例えば、逸失利益として、年収と年齢の算出から3000万円が認められるというようなケースの場合、後遺障害投球1級であれば、そのまま3000万円が認められることになりますが、死亡の場合には、3~4割(立場によって異なります)の控除がされ、1800万円~2400万円ということになります。
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