給与の不払いが生じる場合

給与の不払い(残業代の未払などではなく、基本給も含めた部分の不払い)は、日々の生活の糧を奪うものであり、労働者にとって死活問題です。
ただ、色々と難しい問題があり、我々が事件として依頼を受ける場合はさほど多くありません。

給与の不払いが発生するケースは、大きく分けて2つあります。1つは、そもそも経営者がいい加減な人間である場合と、経営が苦しく、給与の支払さえ出来ないという場合です。

経営者がいい加減な人間である場合

経営者がいい加減な人間である場合には、給与の支払もいい加減になる場合があります。
例えば、就職段階の勧誘では調子のいいことを言っていたけど、言われたとおりの金額が支払われないとか、ちょっと売上が少ない月は手元にお金がないわけでもないのに給与の支払を渋るようなケースです。
前者のようなケースでは、いい加減であることを気付いた時点で退職していることが多いので、給与の不払いも1、2ヶ月で、弁護士が依頼を受けて行うには費用対効果的に厳しい(特に本人は経済的に困窮していることが多い上に請求には必ずしも即効性がない)ことが多いです。
後者のような場合も、同じように早めに見切りを付ける方がいいですし、多くの方はそのように対応している場合が多いのですが、断続的に支払われている内にずるずると蓄積してしまい、ある程度まとまった金額になっている場合があります。このようなケースでは、請求が可能な場合もあります。

経営が困窮している場合

経営が困窮している場合、従業員の給与を優先的に支払をしようとしてもそれさえ準備できないケースもあります。実際の給与の不払いは、こちらのケースの方が圧倒的に多いでしょう。
こういったケースでは、早晩経営が破綻し、自己破産してしまうというケースも少なくありません。裁判で請求している間に破産してしまうと、結局裁判をした意味はなくなってしまいます。
我々が依頼を受けるとしても、経営破綻による回収不能を考慮せざるを得ず、労働者の方にとっては厳しい選択になります。

ただ、給与は、自己破産手続においても、他の債権よりは優先する取扱がなされていますし、会社自体が払えない場合でも、公的な制度として、未払賃金の立替払制度があります。
これを利用することにより、給与の8割を公的資金で立替えてもらうことが出来ます。

雇用調整助成金について

コロナ禍において、雇用調整助成金の給付を受ける会社が増えています。雇用調整助成金は、仕事量の減少でやむなく従業員を休業させる際、給与額の一部(コロナ禍の特例では、全部になるケースもありました)の助成を受けることが出来る制度ですが、あくまでもこれは事後的助成で、一旦は会社が従業員に給与を支払わなければいけません。給与の支払の事実を証する書類も提出した上で助成金の申請をしているはずなのです。

ところが、会社の中には、助成金の支給があってから支払うと言って、従業員への給与の支払自体を遅延させているケースも散見されるようです。
これは許されない話であり、きちんと期限通りに支払ってもらう権利があります。