インターネットの普及により、我々が得られる情報は爆発的に増加しました。手軽にアクセスして情報を入手できるだけでなく、誰もが手軽に情報発信を行えるようになったことで、必ずしも真実ではない情報も溢れています。

中には、事実無根の情報により、誹謗中傷されるケースも多々見受けられるようになってしまいました。その多くは、2ちゃんねるや5ちゃんねる、爆サイなどの掲示板サイトやX(旧Twitter)などのSNSなどに書き込まれています。

これらのサイトでは、高い匿名性があるため、多くの場合、誰が流した情報かさえはっきりしない場合も少なくありません。

誰も見ないような情報であれば、相手にしないというのも一案でしょう。しかし、情報が拡散すると、手の施しようがない場合もありますし、自分の名前(法人の場合は会社名)で検索すると上位に表示されてしまうなど、無視できないケースであることもあります。
そのような場合には、書き込まれた情報を削除する方策を考えなければいけません。

また、同様の情報が何度も書き込まれるケースもあります。このような場合には、削除をするだけではいたちごっこですから、書き込みを繰り返している人物を特定し、対処をする必要があります。

ここでは、インターネットにおける名誉毀損やプライバシー侵害に特有の方法である、削除請求、発信者情報開示について説明します。
※ 下の動画は、プロバイダ責任制限法改正(発信者情報開示命令制度の創設等)よりも前に撮影したものであるため、現在の情報としては誤りの部分もあります。ご了承下さい。このページの本文と異なる内容については、本文の方が正しいです。

削除請求

削除請求の必要性

誹謗中傷する書き込みがなされた場合、まず、被害者が一番に望むのは情報の削除でしょう。

しかし、書き込んだ人物が誰かわからないことも多いですし、分かったとしても、おとなしく削除に応じるとは限りません。

このような場合、掲示板やSNSの運営管理者に削除を請求する方法、あるいは、検索エンジンに対し検索結果として表示されないよう積極的に誰の目にも触れない状態にする方法が考えられます。

なお、削除請求は、誹謗中傷によるプライバシー侵害、なりすましなどでも可能です。

運営管理者に対する削除請求

サイト管理者に対する請求には、大きく分けて3つあります。

1.運営管理者が用意するウェッブフォームによる請求
運営管理者は多くの場合、不適切な書き込み、投稿に対する削除要求に対応する方法を持っています。これを利用して削除請求を行うのが一番手軽な方法であり、迅速に対応してくれるサイトもありますが無視するサイトもあります。場合によっては自分でできると思います。

2.プロバイダ責任制限法ガイドラインに基づく請求
インターネット上に書き込まれた内容を削除するにあたっては、削除しない場合には書き込まれた人の、削除する場合には書き込みをした人の権利侵害になる可能性があります。

そこで、サイト管理者がどのような場合にそれぞれ責任を負うかについて規定した法律がプロバイダ責任制限法です。これに基づいて、業界団体である日本テレコムサービス協会が、運用にあたってのガイドラインを策定しています。これに基づいて削除要求をする方法があります。

この方法によった場合、原則として書き込んだ人に意見照会するので、間接的に書き込んだ人に対する警告の効果を持つ場合もあります。

3.検索エンジンに対する削除請求
誹謗中傷を行っているケースでも、たとえば自前のサーバーを使って発信しているなど、削除請求に応じる可能性が低い場合もあります。この場合には、Google等の検索エンジンに対して,検索結果の削除請求をすることが考えられます。有名な大規模サイトならともかく、小規模なサイトに検索エンジンを経由せず自力でたどり着く人は皆無なので、検索エンジンに表示されなければ事実上誰もたどり着けなくなるので、事実上削除したのと同様の効果があります。
どのような検索結果であれば削除の対象になるかですが、プライバシー侵害に最高裁の判例によれば、事実を公表されない法的利益と検索結果を提供する理由に関する状況を比較衡量して決定する、とされており、削除が認められるかどうかはケースバイケースの個別判断になると考えた方がいいでしょう。
そのポイントをいかに突くかも、弁護士の腕の見せ所といえます。

4.仮処分
相手が任意の履行に応じない場合には、裁判所に対し、削除を求める法的手続きを求めます。仮処分は、通常の裁判に比べると迅速ですが、前述した他の方法に比べると時間がかかることが多いです。

管轄ですが、違法な書き込みは人格権侵害であり、削除請求は人格権侵害を根拠とする差止めの請求で持参債務ということになりますので、本人の住所地で行なえます。例えば広島市内に在住の方であれば、広島地方裁判所(広島市中区上八丁堀、広島城、RCCの東、広島合同庁舎の北)で行うことができます。

なお、仮処分は、サイトに対するコンテンツの削除請求、検索エンジンに対する検索結果の削除請求のいずれにおいても利用できます。

発信者情報開示

1.発信者情報の開示の必要性
書き込みが単発のものである場合には、その記事を削除してもらえば、問題の多くは解決するでしょう。しかし、繰り返し書き込みがなされる場合もあり、削除請求だけではいたちごっこになりますので、今後の行動を止めさせるためには、相手を突き止める必要があります。通常そういう書込をする人は匿名ですから、サイト管理者等から発信者情報の開示を受け、人物が誰かを特定しなければいけません。

この手続には、以下の通り、かなり多くのハードルがあります。したがって、弁護士に依頼しなければ困難ですし、相応の費用がかかります。

2.手続
手続は、まず、書き込みがされた掲示板やSNSのサイト管理者に対して発信者情報の開示請求を行います。ごく一部の業者を除き、サイト管理者は任意には開示しませんので、法的手続きを利用することになります。かつては、削除請求と同様仮処分手続を使うことが多かったのですが、現在は、発信者情報開示命令という開示請求に特化した制度が創設され、以前よりも大分使い勝手がよくなりました。

書込がなされたサイトの管理者が保有情報で一番確実に存在するのは、書き込みをした人のIPアドレスです。メールアドレスや電話番号を把握していることもあり、その場合にはこれらの開示請求も可能です。しかし、蓋を開けてみたらなかったという場合もありますし、フリーメールのためそれだけでは個人の特定にとって不十分な場合も多いため、これらの開示を請求する場合も、併せてIPアドレスの開示を請求することは必須です。
このIPアドレスで、どこのプロバイダを使ってアクセスしたかが分かります。しかし、誰が使ったかはそのプロバイダしか分からないので、そのプロバイダから、そのIPアドレスを利用してアクセスした人の住所や氏名、メールアドレスなどの開示を受ける必要があります。
つまり、もう1度発信者情報の開示命令制度を利用する必要があるのです。

プロバイダは多くの場合、アクセスの記録を2~3ヶ月で消去してしまいますので、迅速に手続を進める必要があります。
※ 開示命令制度創設前は、消去を止めてもらうようプロバイダに手続を別途取る必要があったのですが、現在は、発信者情報開示命令の申立を行えばプロバイダは情報を保管するのが通常であるため、現在ではその必要性は小さくなっているようです

3.管轄
発信者情報開示手続の管轄は、原則として相手方(サイト管理者やアクセスプロバイダ)の所在地で、多くの国内法人は東京ですし、海外法人の場合は東京になります。つまり、ほとんどの場合、東京地裁で手続きをする必要があるのです。開示命令制度においては通常の手続に比べ管轄は拡大されていますが、東京地裁で行うことになるケースが圧倒的に多い状況はあまり変わっていません。
ただ、最近になり裁判手続はWeb会議が普及し、開示命令制度においても広く利用されているので、以前のように何度も東京地方裁判所に出頭しなければならない(そのために東京の弁護士に依頼するのに比べ割高になりやすい)状況ではなくなりました。この点については安心してご依頼下さい。

4.加害者(個人を特定された方)の対応について
どうせバレないと軽い気持ちで書込をしてしまうなどしてしまったりして、プロバイダからの問い合わせや被害者の依頼した弁護士から通知が届いた方もいらっしゃるでしょう。
開示請求の対象となるプライバシー侵害や名誉毀損を行うことは違法であり、決して褒められたことはありませんし、一定の責任を取らなければ行けません。しかし、中には、法外な損害賠償請求を受けるケースも決して少なくありません。相手の要求通りに支払わなければいけないとは限りません。
交渉を自分で行うのが不安な方は、ご相談下さい。

なお、誹謗中傷以外にも、著作権法違反(違法ダウンロード)をしてしまい同じようにプロバイダからの問い合わせ文書、あるいは被害者の依頼した弁護士からの通知が届いたという方もいらっしゃるかもしれません。
トレントに代表されるファイル共有技術の普及で違法ダウンロードは増加しており、動画サイト運営事業者は摘発に注力しています。誹謗中傷同様、どうせバレないと軽い気持ちでやってしまいがちですが、かなりの方が責任追及を受けています。
これについても相談を受け付けています。

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