破産や個人再生についてろくに説明せず、任意整理ばかりを勧める事務所には注意が必要です。
元金が減る見込がほとんどない今、任意整理で債務整理がうまくいくケースは限られています。
先日、問題のある司法書士事務所の被害に遭った(契約し、一応任意整理は終了したものの、結局早い段階で支払が行き詰まった)方から、あらためて法的手続(破産ないし個人再生)の依頼を受けましたが、その方から、被害を受けた事務所の説明資料を入手しました。内容を確認すると、見事なまでになりふり構わない任意整理推し。任意整理に誘導することしか考えていない酷い資料でした。
そもそも、今の法律では、ほとんどの場合任意整理では元金は減りません。したがって、任意整理でできることは月々の支払条件の変更、将来の利息カット位しかできないので、債務がある程度多額になると全く役に立ちません。その人の収入にもよりますが、50~100万円程度ならまだしも、それより多くなると難しいケースが多くなってきます。
しかしその資料では、ほとんどの記載が任意整理。6枚ほどの説明資料の中で、自己破産と個人再生は3分の2ページほどしか出てこず、説明がないに等しいのです。
そして、任意整理がいかにいいものか、という点ばかりが強調されており、相談される方の債務総額について全く記述がありませんでした。債務整理における手続選択で、まず最初に考えるべきは債務額です。
なぜなら、債務整理は債務から解放することが目的ですから、分割なら減額がなくても支払えることが任意整理の絶対条件になります。それが無理なら、自己破産か個人再生手続をするしかありません。しかし、そういったことは一切書いてないのです。
挙げ句の果てには、任意整理なら「保証人には迷惑をかけない(ただし、整理の対象から外した場合に限る)」といったことまで書いてありました。確かに、自己破産、個人再生と違って任意整理は特殊な事情がある債務を整理の対象から除外することができます。しかし、多くの場合、保証人が付いている債務は他の債務に比べて多額です。これを対象から外してしまうと、債務整理が失敗する可能性が極めて高くなります。
つまり、債務総額に関わらず任意整理を勧めることも、保証人がいる債務を任意整理の対象から外して債務整理を行うことも、依頼者が返済完了までに行き詰まってもいいと思っている怪しい事務所の可能性が高いということなのです。
司法書士は地裁の手続の代理人になれないため、特に任意整理に誘導しようとしているというのもあるかもしれません。しかし、最近は弁護士でも任意整理に誘導している事務所が多い印象があります。その方が無資格者に定型的な仕事をさせやすいのかもしれません。
いずれにしても、自己破産や個人再生についてろくに説明せず任意整理の話からする事務所は、それだけで怪しいのではないかと疑ってかかった方がいいでしょう。