先日、広島弁護士会が、広島県行政書士会の会長声明2通に対し、抗議文を発出しました。
抗議文全文はこちら
私は、その抗議文を内部提案した非弁・業務広告調査委員会の委員長ですので、本日の記者会見に会長副会長と一緒に出席してきました。
一般向けのテーマではないので、会見といっても、来て頂いたのは地元新聞1社だけでしたが・・・(苦笑)

以前、このブログでも、これらの会長声明がいかにおかしいかを説明したものがありますので、よろしければご覧ください。
広島県行政書士会の職域に関する会長声明の誤り
広島県行政書士会の自賠責保険の取扱権限に関する主張の誤り行政書士会会長声明のきっかけ~会員への措置請求とその立場~

会長声明は、初版が去年の5月に出されており、現在は、今年2月の改訂版が行政書士会のホームページに掲載されています。抗議文作成に先立ち、我々が行った調査や紹介を踏まえて改訂したということなのですが、私の見る限り、本質的な部分は全く変わっていません。

広島県行政書士会のページはこちら

これらの会長声明で一番問題なのは、自分たちの仕事がなくなったということで、なりふり構わず権限拡大だけを考えているということです。依頼者の便宜や自分たちの能力など全く考えていません。

会長声明は2通に別れており、1通は権限全体の話、もう1通は自賠責保険に関する請求の話です。
権限全体の声明に、こんな文章があります。
「現代社会ではパソコン・コピー機器といったOA機器が普遍的に存在し、文書を作成するにあたり、他者に機械的な代筆行為を求める場面はほとんどなくなった。また、国民の知識水準も高く、他者に簡易な内容の書類について代書作成を求める場面もほとんどなくなっているのである。(中略)また「他人の嘱託があった場合に、唯単にその口述に従って機械的に書類作成にあたるのではなく、その嘱託人の目的が奈辺にあるか、書類作成を依頼することが如何なる目的を達するためであるのかを、嘱託人から聴取したところに従い、その真意を把握し究極の趣旨に合致するように法律判断を加えて、当該法律事件を法律的に整理し完備した書類を作成するところにその業務の意義がある」

非常に分かりやすく、自分たちの元々の仕事がなくなったから、やれる仕事の範囲が拡大されるべきだと書かれているわけです。

なお、中略したところには、法改正があり、その法改正が拡大の理由だと主張しているわけですが、この改正というのは、法律の冒頭にある「趣旨」の部分だけ。ここはもっぱら、なんのための法律家、というのが書かれているところで、権限にはなんの影響もない部分です。改正の際の国会でも、「権限に変更はない」旨の明確な答弁がなされています。なんの根拠にもならないのです。

国家資格というのは、国民の皆さんが能力のない自称専門家に食い物にされることを防ぐのが主たる目的であり、既得権益保護は副次的効果に過ぎません。
もし、行政書士が、底辺レベルの人でも弁護士と同等の能力を備えているといえるのであれば、権限拡大もあり得るでしょう。そして、底辺レベルというのは、資格試験の内容や難易度で判断されます。

はっきり言えば、行政書士試験は、法律判断をさせられるかどうかを判定するような試験内容にもなっていませんし、必要とされる知識レベルも表面的か津料も限られており、難易度もさほど難しいものではありません大きな本屋に行って、全科目の知識習得に必要な行政書士試験と司法試験の参考書や問題集の量一式を比べて頂ければ一目瞭然だと思います。
知識のない人間に仕事をさせるということは、思わぬ失敗があるリスクがあるということです。紛争になっている場面に、そういう人が介在しては絶対に駄目だということで、我が国では司法試験が他の試験に比べて高い難易度が設定されているのです。

また、自賠責保険に関する会長声明は、行政書士会が重点分野としているのが、交通事故業務だから、ということでわざわざ別に出されているわけですが、これも、非常に自分勝手な話です。というのも、行政書士会も任意保険に関する業務は出来ないことは認めざるを得ず、自賠責保険の業務だけしか出来ないからです。
今の交通事故において、損害賠償の請求の中心は任意保険の会社相手であり、自賠責だけ切り取ってやっても意味がないことがほとんどです。もちろん、中にはそういう事件もありますが、そういう問題かどうかを交通事故の被害者に判断させるのは酷でしょう。
自賠責の業務しか出来ない行政書士に依頼したら任意保険業務を任せたらどうなるか。①自分で保険会社と交渉する②別途弁護士に依頼する③行政書士が弁護士法違反を犯してこっそり請求する の三択でしかありません。
つまり、依頼者に迷惑をかけるか、行政書士が違法行為を行う温床になるかのいずれかしかないわけです。
そもそも、自賠責の後遺障害等級認定に関する異議申立業務も、絶対にやってはいけない分野のはずですが、行政書士会は、ここは出来ると言い張っています。しかし、そこが出来るとしても、任意保険に関する業務は絶対に出来ないわけで、この主張を会として行うこと自体が、自分たちの権益拡大だけをなりふり構わず行う利己的な行動ということを裏付けているともいえます。