非弁・業務広告調査委員会の委員長として(といっても、自分のHPのブログに書いているところからも分かるとおり、組織としての弁護士会とは何の関係もなく個人の立場で書いております)、広島県行政書士会の会長声明には大きな問題があるということを書いてきました。

その記事はこちら

広島県行政書士会の職域に関する会長声明の誤り
広島県行政書士会の自賠責保険の取扱権限に関する主張の誤り
自賠責保険の方の声明に書いてありますが、これらの会長声明のきっかけになったのは、広島弁護士会による所属会員への措置請求、そして行政書士会による照会のようです。

今回はこの内、措置請求の件とそれに関連するお話しをしたいと思います。

なお、照会に関してはこちらをご参照下さい。
行政書士会会長声明のきっかけ~弁護士会からの照会~

1 2018年の措置請求

報告といいながら前の記事をまず引用しますが・・・措置請求(県への懲戒請求)した事件に関しての詳しい事情はこちらです。
非弁行為をした行政書士を措置請求

読みに行くのがめんどくさい方のために要約すると、
①着手金・成功報酬という、交渉による成果を上げることが前提とした契約内容
②契約書のひな型が、弁護士に依頼して解決した場合にも行政書士に成功報酬が発生する(紹介料の扱いになる)契約書の体裁だった
ため、非弁行為であることの決定的証拠がある事案でした。

この件については、さすがに行政書士会もかばいきれず、自らも措置請求を行うとともに、会員資格の停止の処分をしたようです(弁護士と異なり、業務停止の権限は行政書士会にはなく、県にしかありません。会員資格停止は、職務上請求ができなくなるなど一定の意味はあるようです。)。なお、今のところこの人物が業務停止になったという事実は聞いていません。

もっとも、以下の通り、プレスリリースが非常にいいわけがましいというか、トカゲのしっぽ切りした上で自分たちの職域を守りたい方が前面に出ている内容ですが・・・。

https://www.hiroshima-kai.org/doc/efilebox1030/1548493001802p2gram20181225-1.pdf

なお、「任意保険であっても弁護士法に違反しない限り業務として行える」と書いていますが、弁護士法に違反しない任意保健請求などありません。
保険会社の提示額が一般的な裁判の水準と乖離している現状にあっては、「紛争がほぼ不可避である」(最判平成22年7月2日参照。詳しい説明は自賠責に関する会長声明の記事にあります)ことが明らかだからです。

2 この行政書士の立場について

この問題は、一行政書士の問題に留まらないと私は考えています。なぜならこの行政書士は、「広島県行政書士会交通事故業務協議会」という行政書士会の専門協議会の代表を数年間務めた人物だったからです。
さすがに数年前のことで、現役の代表ではありませんでしたが、他府県の行政書士会で交通事故業務に関する講演なども行っている人物でした。

3 広島高判平成27年9月2日の行政書士について

広島弁護士会で措置請求をした行政書士がもう1人います。この人物は、前の記事で何度か出てきている広島高判平成27年9月2日で、ヤミ金融の事件を扱ったことに関する報酬の返還を命じられた人物で、実際に業務停止になりました。

この人物、実は非弁行為の常連で、このヤミ金融の事件に関する調査は、3回目でした。その前に2回、離婚事件に関する交渉を送ったこと、商工ローンに対する債務整理を行おうとしたことで調査しており、私が調査の担当でした。「書面作成の権限はあるのだから、電話でしゃべったりせず書面でやりとりすれば交渉しても問題ない」と弁護士に堂々と言う姿に呆れるばかりでした。
ただ、この時はまだ弁護士会としても非弁調査の経験が少なかった時期であったため、本人の警告書の送付と行政書士会への申し入れだけで措置請求などは行いませんでした。

そしてこの人物もただの一行政書士という感じではなく行政書士会の関わりがかなりありました。
10年ほど前は、「業務部長」だったようで(私が副会長だった時名刺を渡された)、さらに平成27年当時は「監察部長」(今は改組したのかそういう役職はないようなので若干違っているかもしれないですが)だったのです。
非弁の常習犯が弁護士会からの申し入れよりも後に業務に関する部署のトップを務め、さらに判決で公になった時には監察部長という・・・。

4 自浄作用の欠如?

数年内に非弁行為で弁護士会として措置請求した行政書士が、2人とも業務拡大の旗頭として行政書士会の要職にあったということになります。それだけでも異常な事態だと思うのは私だけはないでしょう。

そして今回の一連の会長声明がその延長のものだとすると、広島県行政書士会には自浄作用はないと判断せざるを得ません。
弁護士会としても、その前提で毅然とした対応を取っていくべきなのだと思いますし、そういった方向の意見を委員会等でも述べていきたいと考えています。