今回は、Twitterの武内謙治先生のTwitterアカウント@KPf_M の書き込みを参考にして書かせて頂きます。先生は、九州大学法学部の研究者だそうです。
川崎の中学生殺人事件で、凶悪な少年事件が増えている、という話がまた出てきているように思います。この10年ほど、そのような状態が続き、少年法が厳罰化するなど、弁護士からしてみると由々しき事態になっています。
この「由々しき事態」というのは、自分たちが依頼を受ける人が不利になるから、という意味ではありません。社会経済的に見ても、厳罰化は何のメリットもなくむしろ有害だと考えるからです。
犯罪の大半そうですが、特に少年事件の場合、これをやったら重い罪になるから止めよう、という発想はありません。後先考えずにやってしまっているものばかりです。後先を考えられない未熟さだからこそ、保護、教育という発想で少年法ができています。
そういった事実を無視して厳罰化を叫ぶのは、根本的に誤っていると思います。
被害者のことを思えば、という意見もあります。しかし、被害者のために厳罰化、というのは、国が代わりに報復をするべきだという発想であり、とても賛同できません。被害者は救済されるべきではありますが、加害者を被害者の報復の対象にすることで多少なりとも満足させても、誰の利益にもなりません。あくまでも刑罰や保護処分は、抑止力と加害者の更生の手助けであるべきです。
さて、前置きが長くなりましたが本題です。凶悪な少年事件が増えている、とよく言われますが、その根拠はほとんどの場合、センセーショナルな少年事件が話題に上ったというだけの話です。そういった事件は、きわめて特殊な事情が重なり合って起きる例外的な事態であり、制度を変える根拠にするのは本来ふさわしくありません。また、最近特に増えたということもなく、報道がセンセーショナルになった、という側面も強いでしょう。
では、一般的に言って、凶悪な少年事件は増えたのでしょうか?
この点について、竹内先生のツイートに、非常に説得力のあるグラフが上がっていました。元データは、犯罪統計であり、国のデータです。
少年による凶悪犯検挙人員https://twitter.com/KPf_M/status/571273553573752832
少年による殺人検挙人員 https://twitter.com/KPf_M/status/571278044381339650
年齢層別一般刑法犯犯罪検挙人員https://twitter.com/KPf_M/status/572174776459923457
いかがでしょうか?
まず、少年の殺人事件による検挙は、戦後20年ほどかなりの数に上り、1番多いときには450人にも上りました。しかし、70年代半ばから一気に減少し、ここ数年は数十人のレベルに落ち着いています。
その他の凶悪犯についても、多少のズレはありますが、同じような傾向があります(強盗については、90年代後半~2000年代前半に一旦増えている点が特徴的ですが)。
そして、最近は、60歳以上の検挙の方が、14歳~19歳の検挙よりも多くなってきているのです。これは、単純に少子高齢化も影響しているとは思いますが、それにしても、これらの統計からは、凶悪な少年事件が増えた、とはとても言えません。
弁護士の実感としても、私の20年の弁護士の経験の中で、ずいぶんと少年はおとなしくなったように思っています。少年事件と言えば、暴走族などで集団で悪さをする、というのが定番でしたが、今は暴走族はほぼ壊滅状態。たまに「かっこいい」と言って暴走族を名乗っている少年の事件を担当することはありますが、件数もさることながら、「捕まりたくないから暴走禁止の暴走族」という訳の分からないグループもあったりします。
大学時代には、「チーマー」という危ない喧嘩グループなどが社会問題になっていたことを考えると、ずいぶんと少年達はおとなしくなったなあ、という印象です。