DNA鑑定と親子関係に関する最高裁判決

今日、新聞各紙に、DNA鑑定で実際の父親でなかった場合でも、親子関係の不存在が認められなかった、という最高裁判決が出ていましたね。

新聞各紙を見てみたのですが、まるで、DNA鑑定自体に意味がない(親子関係がないと認められても、嫡出推定が及ぶ相手は、物理的に性交渉があり得ないケースでない限り親になってしまう)かのように読める記事もありました。ちょっといいすぎかもしれませんが、記者が制度を分かった上で書いているのかさえ怪しいと思いました。

というのも、嫡出否認の訴えという制度と、親子関係不存在確認の訴えという制度の2つがあるというのは、普通の人は知らないと思いますが、そこの説明がほとんどない新聞もあったんですね・・・。

婚姻期間中(厳密に言えば、婚姻後200日~離婚後300日)は、夫婦の子であると推定されることになっています。最近はできちゃった結婚などで200日よりも前に生まれる子どももいますが、そういった子を夫婦の子として届け出ることももちろん可能です。

これらの子どもが、実は自分の子どもでなかった場合、どういった争い方をするか。夫婦の子であると推定される場合には、嫡出否認の訴えという方法によらなければならないとされています。
推定されない場合と、推定される場合でも、一方が刑務所に入っていたなど、物理的に性交渉が完全に不可能な状態であることが明らかな場合には、親子関係不存在確認の訴えによることが出来るということになっています。

何が違うかというと、嫡出否認は、生まれてから1年以内に、夫からのみ訴えることが出来るんですね。したがって、実際の父親が分かりきっている場合などでも、奥さん側からは嫡出を否認できないのです。夫側からも、他人のこと知りながら実施として育てることを決意して何年か育てたもののやっぱり我慢できず否認、ということは許されないわけです。

昔は、本当に自分の子かというのは、厳密には分からないものでした。しかし今では、DNA鑑定で、親子関係はほぼ間違いないレベルで確認できます。DNA鑑定上、絶対に他の子どもではないといえる場合に、嫡出否認の厳しい要件に基づかなければ親子関係が否認出来ないのか、という点が問題なわけです。

通常、他の男の子どもを出産するような場面では、夫婦関係はほぼ壊れており、出産の段階で嫡出否認がなされるのが普通です。しかし、男が拒む場合もありますし,生まれた頃は自分の子だと信じて疑わなかったが、将来になって、自分の子どもではなかったということが発覚するケース(少し前に芸能人でもそんなことがありましたが)もあります。
こういったケースでどう取り扱うのか、というのが今回の件でした。

昨日は、3つの判決がありましたが(参考:http://www.courts.go.jp/search/jhsp0010.action),その内2件は、結婚している間に他の男性と浮気をしてその相手との子どもを出産、その後離婚して浮気相手と再婚し、実際にはそちらの家庭で暮らしている、というような事例のようです。もう1件は、1年の期限を過ぎてから夫が嫡出否認の訴えを起こしたケースのようです。

これらのケースは、全体から見ると、かなりレアケースだと思います。ほとんどのケースは、嫡出否認の訴えにあたってDNA鑑定を行えば、それに沿った判決が出るでしょう。

しかし、嫡出否認が出来ないケースでも、他人の子どもを嫡出子としてしまうケースというのは生じるし、DNAを調べようと思えば調べられる時代になってしまったわけです。そんな中で、嫡出否認の要件を満たさないから貴方の子です、という紋切り型の対応でいいのか?
皆さんは、直感的には、明らかに自分の子ではないんだから、嫡出関係は否認されるべきだ、最高裁の判決はおかしい、と思われるかもしれません(私も直感だけだとそうです)。しかし、ことはそう単純ではないのです。

と、本来はここの話をしっかり書くべきだと思うのですが、かなり長くなってしまったので、今回は制度の説明だけにして、あらためて、どういう問題なのか、別の記事で書きたいと思います。

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