美容室で男性のカットは違法?~反対解釈と類推解釈~

すみません、ものすごく長くなってしまいました・・・。しかも震災4周年の日にどうでもいい話題ですみません・・・。

さて、気を取り直して・・・昨日今日と、こんな記事が目につきました。

安倍首相の「美容室でカット」は違法?「男の散髪」をめぐる奇妙なルール
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150310-00002781-bengocom-soci

朝たまたま筋トレをしているときについて居た情報番組で、この話題をやっていました。
この記事と、その時の番組の内容だと、態様以下のようなことのようです。
① 美容師法では、美容師の業務美容とは、パーマネントウエーブ、結髪、化粧等の方法により、容姿を美しくすることをいうとされている。
② 厚労省が各都道府県に出した1978年12月に各都道府県知事あてに出した「理容師法及び美容師法の運用について」という通知では、美容師が行うカッティングについて、「コールドパーマネントウエーブ等の行為に伴う美容行為の一環として、カッティングを行うことは、その対象の性別の如何を問わず差し支えないこと。また、女性に対するカッティングは、コールドパーマネントウエーブ等の行為との関連の有無にかかわらず行って差し支えないこと。しかし、これ以外のカッティングは行ってはならないこと」とされている。
したがって、この通知にない単なるカッティングは、本来やってはいけない。
③ 通知は都道府県に送られただけで、その先は都道府県の判断だから、美容師が知らない場合もありうる。だから聞いたことがないという場合もありうる。

多分、一般の人はなるほどと思ったのでしょうが・・・。本当にそうでしょうか?その解釈も間違いとはいえませんが、私はちょっと違うと思っています。

その前にまず、法律の解釈について簡単に説明したいと思います。現実の社会では、このように、法律や通知などに書かれていない部分の扱いが問題になることがあります。そういう場合に、類似する条文を利用して解釈を行うことがあります。典型的なのが、類推解釈と反対解釈です。(他に、拡張解釈というのもありますが今回は省略します。)また、全く解釈の役に立たないという場合もあります。

などと抽象的に言っていても仕方ないので、もう少し詳しく説明しましょう。

「●●してはいけない」という法律があった場合に、
「●●もいけない」という結論を導くのが類推解釈です。
「●●はしてもよい」という結論を導くのが反対解釈です。
「●●していいかどうか分からないから別の観点から判断しましょう」という場合もあるでしょう。
・・・抽象的なままですね。もう少し具体的にします。分かりやすくするために、実際には、法律がある場面でもないこととして扱います。
例えば、「覚せい剤を売ってはいけない」という法律だけある場合に、同じくらい危険な「コカインも売ってはいけない」というが、類推解釈です。
「18歳未満はこの薬を使ってはいけない」という法律だけある場合に、「18歳になったら使ってもよい」と考えるのが反対解釈です。
要するに、文脈から、同じようなものだから同じように、と解釈するのか、特別にこれだけダメと言ってるのだから他はいいよね、と考えるということです。
一方、「コアラを食べてはいけない」と法律がある場合に、「じゃあカンガルーは?」となったら、全然別問題だから分からん、という場合もあるでしょう。

美容師の「カットだけはダメ」というのは、「女性のカッティングとパーマなどの時は男性でもいいよ」と書いてあるんだから、「男性のカットだけはダメ」ということだよね、という反対解釈になるわけです。ああなるほど・・・。
ちょっと待って下さい。本当にそうでしょうか?確かにこの文章だけ見るとその通りです。しかし、この通知、何で出されたものなんでしょう?
1978年というと、私は幼稚園児で、物心ついていたか怪しいくらいですが、当時はまだ、「男性は理容院、女性は美容院」と言われていた時代です。つまり、「え?男性も美容院行っていいの?」という疑問符が世間で飛ぶような時代な訳です。そんな時代に「女性はカットだけでもいいし、男性はパーマかけるついでに切ってもらう場合はいいんじゃない?」ということを示したのが、この通知だといえます。言い換えれば、都道府県に対して、「美容院が男性の髪の毛を取り扱っても特に取り締まる必要ないよ」というのが本来の趣旨で、当時のブーム(に関する私の記憶)からしても、パーマをかけない男が美容院で髪の毛を切るということが想定されていなかったからこんな文章になっただけではないでしょうか?そうすると、むしろ、男性のカットは何も考えていない、という解釈の方が正しいように思います。

少なくとも、この通知で、③のように、都道府県が何もしなかったのが悪い、みたいなトーンで説明するのは都道府県が可哀想です・・・。取り締まらなくていいよ、という意味だから、わざわざカットはダメだよ、なんて反対解釈をして広報しませんよ・・・。

ところで、この通知、①の通り、「容姿を美しくすること」という美容に、カットはどこまで含まれるのかがはっきり書いていないから問題になり、必要になったわけです。そうすると、今の時代では、パーマをかけない男性が容姿を美しくするためにカットに行くのは当たり前のことで、わざわざ化石のような通知を反対解釈をする必要がどこにあるのでしょう?

とはいえ、こんな紛らわしい通知をそのままにしておくのもどうかと思いますし、こういうものは、何か問題になった時に改正しておかないとまた闇に沈んでしまいます。この機会に、改正してしまうべきだと思います。

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