サッカーボール訴訟最高裁判決

昨日、こんなニュースが流れており、TwitterやFacebookでは、同業者がかなり話題にしていました。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150410-00000100-san-soci

既に最高裁のホームページにも全文が掲載されています。

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/032/085032_hanrei.pdf

簡単に言うと、11歳11ヶ月の子どもが学校でフリーキックの練習をしていたら、ボールが外に出て、そのボールをよけようとした80歳代のバイクに乗った人が転倒してその後は死亡した、という事件です。

大人であれば、このフリーキックをしていた人が責任を問われるかどうか、という問題になるのですが、比較的幼い子どもの場合、親の監督責任が問題になります。この「比較的幼い」というのは法的には責任能力がないという言い方をし、判例によると12歳くらいが境目であるといわれています。本件は微妙な年齢ではありますが、高裁で責任能力がないと判断されており、最高裁もその前提で判示しています。

この親の監督責任は、これまでの判例では無過失責任に近い重いものととらえられており、大半の事例では親の責任が肯定される傾向にありました。
被害者に全く救済がないのはいかがなものか、という観点もあり、また、保険での支払で丸く収まる事例も多いため、そういった価値判断になっていたととらえられています。

しかしこの最高裁の判例は、親の責任を否定しました。この部分についてみてみると、「親権者の直接的な監視下にない子の行動についての日頃の指導監督は,ある程度一般的なものとならざるを得ないから,通常は人身に危険が及ぶものとはみられない行為によってたまたま人身に損害を生じさせた場合は,当該行為について具体的に予見可能であるなど特別の事情が認められない限り,子に対する監督義務を尽くしていなかったとすべきではない。」と言っています。これをとらえて、最高裁が責任の範囲を初めて限定した、ととらえる人もいるようです。
ただ、私はこの判例、射程範囲がどれだけ広いかというと疑問です。

というのも、この認定の前提としては、
① ゴールネットが張られたゴールへのフリーキック
② ゴールの後ろ10mにフェンスと校門があった。
③ さらにその先に道路までは1.8mの側溝があった
などの点を挙げて、普通に蹴っても道路までボールが出るのは常態ではない,と認定しています。

この認定からして、私は、そもそも、これは成人が同じことをやったとしても、本来予見可能性がない(損害賠償責任が認められない)と判断したのではないかと感じました。
つまり、普通はボールが出ることなど考えられないし、ましてやそのタイミングでバイクが通りかかることなどおよそ予知できないから、大人がやったとしても責任を問えない可能性が十分ある。にもかかわらず、親が監督していないということで責任が認められるのはおかしい、と判断したのではないかと思うのです。

中には、監督責任が限定された、と見る論調の記事も見かけましたが、私は、「通常は人身に危険が及ぶものとはみられない行為によってたまたま人身に損害を生じさせた場合は」という辺りに、成人だったとしても責任を問えるかどうか微妙な過失しか認められない場合には、責任を問うのは酷だ、という範囲に留まるのではないかと思います。ただ、こういう事例でも、ほとんどノーチェックで親の責任を認める傾向があったのも確かであり、その意味では、意義深い面もある最高裁判決だと思います。
また、成人でも認定が微妙だが責任が認められる可能性がないわけではない(裁判官により評価が分かれる)ような事例では、成人がやったケースよりも責任が否定される傾向は出てくるでしょう。その意味では、無過失責任に近い、という従来の運用とは差が出てくる可能性もあります。

私は結論的には最高裁の結論に賛成ですが、今後の実務にどのような影響があるのかは気になるところです。

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