久しぶりのブログです。
内部的には若干時機を失した感があるのですが、触れざるをえない重大な不祥事です。

一昨日(平成29年3月3日)、日弁連の総会が開催されましたが、ここで、とんでもない事態が発生しました。ある議題について反対票を投じるはずだった人の委任状が、東京弁護士会によって変造され、別の委任者(おそらく賛成票を投じる人)の委任状として取り扱われかけたのです。
※ 私は、総会には出席していませんでしたので、以下の情報は、全てネット上で得た(出席者や当事者のFacebook投稿などを含めてですが)ものです。

Twitter等で瞬く間に拡散されましたし、Yahoo!ニュースなどでも流れました。とりあえず報道の1つとして、Yahoo!ニュースのソースとなったと思われる弁護士ドットコムの記事を引用しておきます。

https://www.bengo4.com/internet/n_5794/

3通の委任状が、弁護士本人ではなく、東京弁護士会会長の印鑑で訂正され、本来委任されるはずの北弁護士ではなく、主流派、賛成派の別の弁護士の委任状にされてしまっていました。

当然のことながら、弁護士本人ではなく東京弁護士会会長の印鑑が押してあったからといって、本来訂正印にはならないはずですが、なぜか、北弁護士が指摘するまで、この訂正が有効なものとして取り扱われていました。

このような不可解な改ざんがある以上、他の委任状も全て原本確認をして同様の改ざんがないか確認すべきで、いくら時間がかかって日付が変わろうが、当日は流会になりもう1度やらざるをえなくなろうが、実施しなければいけないはずです。しかし、なぜか、3通だけ北弁護士の委任として取り扱うという訂正を行っただけで、そのまま裁決されました。

なぜこのようなことが起こったのか?
当初は、賛成側の工作であるとの見方もありました。というより、あまりに露骨すぎる改ざんのため、それしか考えられなかったという方が正確でしょう。しかし、これだと、同期の点で説明がつかない部分があります。
というのも、日弁連の総会というのは、最終的には主流派の派閥のやりたい放題で、圧倒的多数になる委任状を集めています。議題についても、ある程度議論をさせはするものの、議論打ち切りの動議→強行採決の流れまでシナリオを組んでいます。今回の議題も、反対者は多かったものの否決される可能性はほぼなかったと思います。
一方で、改ざんされた人たちは、発覚すれば絶対に黙ってはいない強い人たちです。はっきり言えば、工作で改ざんを行うのは、ハイリスクノーリターンといわざるをえません。

東京弁護士会の公式発表では、事務処理のミスということでした。
記事だけではちょっと分かりにくいので、少し詳しく説明すると、日弁連の総会では、派閥を中心に主流派が委任状集めをし、何千という賛成票を集めるのですが、多くの場合、この委任状は、受任者が白紙(誰に委任してもいい)状態で弁護士会に届けられます。一方で、受任者は、最大50の委任しか受けることが出来ません。
そこで、弁護士会で、1人あたり50に収まるように割り振りをします。
その過程で、名前が書いてあるこの3通の委任状が紛れ込んでしまい、名前を「弁護士会会長の印鑑で訂正して」他の人の委任状に書き換えてしまったというのです。

実際にそのような事務処理のミスだったのかどうかは分かりません。しかし、仮にそうだった場合、むしろ、より深刻な問題があったと言うべきでしょう。

というのも、名前が書いてある委任状を、白紙のものと一緒になっていたからといって、委任者本人でもない会長の職業上の印鑑で訂正するというのは、それ自体が異常な行為です。本来、そんなことをしても訂正自体が認められるはずもありません。
それなのに、「事務処理のミス」としてそんなことが起こってしまったということは・・・それまでに同じようなことを当たり前にやっていたとしか考えられません。

要するに、何らかの事情で委任状を書き間違えたら、会長の印鑑で訂正してきたし、それを訂正として日弁連が認めてきたからこそ、そんなむちゃくちゃがまかり通ってきたのでしょう。

言うまでもないことですが、東京弁護士会と日弁連は全く別の組織です。日弁連が、そんな認められないはずの訂正を正規の訂正として認めていなければ、こんなむちゃくちゃはあり得ないはずなのです。

東京のような大規模会でなければ、何千という白紙委任状を50人に振り分けるなどという作業は必要ありません。その過程では、書き間違いもあるでしょうし、50以上の委任になってしまうミスもあるでしょう。しかしその場合、無効なものとして取り扱うか、委任者に訂正印をもらいに行くのが筋です。それが嫌ならちゃんと名前を書けばいいわけで、白紙委任状を出したことに伴う当然のリスクです。
にもかかわらず、事務局サイドでの会長印での訂正という、改ざんでしかない取扱を、日弁連が正式な訂正として取り扱っていたということになります。それ自体がとんでもないことですし、許されないことです。

今回の改ざんは、反対派の委任状を賛成派のものに書き換えたということで、より違法性が高いものといえます。しかしそれよりも問題は、このような改ざんを有効と認めてしまうような日弁連の事務処理がまかり通ってきたことだと思います。
一事務局のミスではありません。本来法律家として許されない訂正を、組織ぐるみで認めてきたと言うことになります。