非弁・業務広告調査委員会の委員長として(といっても、自分のHPのブログに書いているところからも分かるとおり、組織としての弁護士会とは何の関係もなく個人の立場で書いております)、広島県行政書士会の会長声明には大きな問題があるということを書いてきました。
その記事はこちら
広島県行政書士会の職域に関する会長声明の誤り
広島県行政書士会の自賠責保険の取扱権限に関する主張の誤り
自賠責保険の方の声明に書いてありますが、これらの会長声明のきっかけになったのは、広島弁護士会による所属会員への措置請求、そして行政書士会による照会のようです。
今回はこの内、行政書士会に対する照会の件について経緯を説明したいと思います。
1 行政書士による公的機関の相談
話は少しそれ、かつ遡りますが、地域によっては、公的機関での交通事故に関する専門相談を、弁護士会ではなく行政書士会が受託し、所属の行政書士を派遣して行っている場合があります。
呉市はその1つでした。
上記の自賠責保険の取扱権限の投稿でも書いていますが、どんなに行政書士の権限を広くとらえても、行政書士には任意保険に関する交渉は行えませんし、相手と紛争が生じれば手を引かなければいけません。当然、裁判をすることもできません。そういったことに対する相談を受けるのは、非弁行為になります。この相談を受けることができると考えるためには、「相手方の反応が分かるまでは紛争性はない」という会長声明の無茶苦茶な論理を取る以外にはないでしょう。
なので本来、役所が行政書士会に依頼すること自体、非弁の温床になりかねないので問題です。しかし、多くの公的機関では相当期間この状態が続いています。
そこで広島弁護士会では、各地の自治体に対し非弁行為が行われないように注意喚起をするなどの活動を行ったりしました(現在も継続中です)。
2 「交通事故業務協議会」のホームページ
そして、それから数年して・・・。以下のようなページができていることが分かりました。
※ なお、今当時の資料が手元にないため、若干の記憶間違いがあるかもしれません。ご容赦下さい。
http://www.jiko-k.com/
当時と体裁が変わっています(私の記憶では、当時は呉だけだったと思いますし、相談内容等についても説明があったと思います)が、まるで交通事故業務協議会というところが自主的に相談会を行っているかのような体裁ですよね?
ところがこの「呉会場」の場所と日時、呉市が市民向けに行っている「交通事故専門相談」と全く同じ日程なのです・・・。
市役所からの受託事業なのに、自分たちが主催であるかのような体裁で広報することに問題はないのか?
そのことを呉市は把握しているのか?
この「交通事故業務協議会」というのは行政書士会とどういう関係なのか?(今のトップページにあるような説明はなかったと記憶しています)
ホームページの内容上、弁護士しかできない相談を受けることができるような記載になっているのではないか?(当時は、相談の内容に関する説明があった記憶です。相談内容に制限があることの明示がないこと、自賠責保険の異議申立ができると明言してあることなど問題が散見されました。)
という、様々な疑問点があったことから、呉市、行政書士会、交通事故業務協議会にそれぞれ照会文書を送ったというわけです。
3 連名の回答
結果的には、交通事故業務協議会というのは、行政書士会の一部門のようで、会の組織図にも記載があります(その意味では、協議会のページにある「行政書士会の承認を受けた行政書士の集団」というのは不正確な表現だと思うのですが)。回答は行政書士会と協議会の連名で届きました。
その回答としては、制限があることを明示しなかったことは不適当であると認めたものの、2つの会長声明のような内容の他、自賠責保険の異議申立はできる、等々といった内容でした。この中身については、弁護士会でも検討中ですので、自賠責保険の会長声明に関する記事以上のお話しは控えたいと思います。まあ、あれが主だった内容のほとんどという気はしますが・・・。
要するに、弁護士会として問題があると思われる点を紹介したのをきっかけに、防衛戦を張ろうとして出したのがこれらの会長声明だということです。結果的には、防衛戦というより炎上の燃料になっている気もしますが・・・。
4 依頼者のためには弁護士による対応が不可欠
業務制限のある行政書士は、事件を終局的に解決することができないケースがほとんどでしょう。したがって、彼ら公的機関の法律相談を担う状態は、非弁行為の温床となるだけでなく、そもそもそれ自体が一般の方々に不便をおかけすることに他なりません。
この自体を弁護士会が長年放置してきたことは反省しないといけないと思いますし、是正していく必要があると思います。
同じような問題として、保険会社の弁護士賠償責任保険は、実は行政書士も利用が可能だそうで、ケースによっては保険会社担当者が非弁行為だと気付かず行政書士と交渉してしまっているケースなどもあるようです。こちらも是正が必要であり、非弁・業務広告調査委員会では、損保協会との懇談会を実施するなどして啓発活動に着手したところです。
こう書いてしまうと、単純な業務の取り合いと取られるかもしれませんが、やはり紛争解決は弁護士の領分であり、それが弁護士法72条(非弁行為は犯罪)の趣旨だと思います。より良い解決のためには、最初から最後まで責任を持てる弁護士が対応すべきですし、本来行ってはいけない業務を行政書士にさせないための活動も、弁護士会として取り組んでいかなければいけない問題だと思います。