知り合いの弁護士のSNSで、こんなホームページが問題にされていました。
www.sihou-ho.com/

※ 知り合いが魚拓をとってくれましたので、上が改訂された時のため、そちらも紹介しておきます。
http://megalodon.jp/2014-0711-1056-07/www.sihou-ho.com/

以前、私が司法書士の簡裁代理権の講師をやっていましたが(今年で3年の任期が終りました)。司法書士は、140万円を超える金額の事件を代理人として受任することが出来ません。

このホームページでは、堂々と、140万円を超える事件の報酬が掲示されています。明らかな非弁行為です。

司法書士の中には、140万円を超える案件を隠れて行う人がいますが、これだけ堂々と掲示する礼は珍しいといえるでしょう。

私もSNSでこのホームページについて非弁行為だと書いたところ、弁護士でない方からいくつか質問頂いたので、この点を意識しつつ、説明をしたいと思います。

以下の2つの疑問が出てきました。
①合意管轄などを設定して簡裁に出せるなら、事件として扱えるのでは?
②さすがに地裁には持っていかないだろうから、任意交渉で終らせるつもりだろうか?

そもそも、残業代請求ですから、就業規則や労働契約書に簡裁合意管轄の定めなんて置くのか、という点もありますがそれはさておき、司法書士は、「簡裁で裁判する案件を代理する」わけではありません。
司法書士法によると、訴訟の目的の価額が裁判所法 (昭和二十二年法律第五十九号)第三十三条第一項第一号 に定める額を超えないもの、つまり、140万円以内の事件でなければ取り扱ってはいけないとされています。したがって、合意管轄をしても、140万円を超える場合は取り扱う権限がなくなります。
そして、事件として代理業務は出来ませんので、任意交渉はおろか、法律相談も受けることが出来ません。

しかし、それではあまりに出来る事件が限られてしまう(正直、140万円以下の事件で係争がちゃんとある事件をやっていたのでは、事務所の運営は成り立ちません)ので、色々と言い訳を考えています。

1つは、140万円を超えるのだけど、一部請求の形で簡裁の事件にしてしまうと言うやり方です。例えば、300万円請求出来るのだけど、300万円の内140万円だけ請求する、という訴訟を提起してしまうやり方です。しかし、これは、明らかに依頼者にとって二度手間ですし、依頼者自身も何で?と思うでしょう。そこで、このやり方は、訴額が140万円をわずかに超えるようなケースを除き、あまり利用されていないと思います。
なお、当然ながら明らかな脱法行為で、事件としては300万円の事件ですから、いくら一部しか訴訟では請求しないといっても相談を受ける時点でアウトです。

もう1つ、書類作成者に過ぎないのだという言い訳があり、こちらの方が一般的です。司法書士には、訴訟も含め、法的な書類の作成をする業務を行うことが出来、それに伴う法律相談を受けることが出来るとされています。こちらの業務として受けているのであって、代理人として活動しているわけではない、というわけです。

140万円を超える時点で、こちらの相談、依頼に切り替えれば、取り扱うことが出来るのだと公言する司法書士もいます。
しかし、「書類作成援助」ですから、本人が自分の考えはまとめてあるが、文書に起こすのが難しいので、そこだけ司法書士に頼む、という制度です。現在の状況を聞き、法的なプランを考えて対応する、というのは、完全に代理の仕事です。全く違う業務です。このようなことは許されないと、司法書士法のコンメンタールにも記載されていたはずですし、講義でもでも説明し釘を刺しています(テキスト上そうなっていますので、全国共通のはずです)。

ひどい人になると、直接交渉を行っているのに使者だと言い張ったり、本人訴訟で地裁に提訴させて、一般人として傍聴し、訴訟の流れを聞いておいてまた裏でアドバイスしたり、書類作成だけは行う、といったことをする人もいます。この場合、本人だけでは訴訟が滞留してしまうのを嫌い、黙認する不届きな裁判官もいます。

こういった事件は、取り締まっていかないといけません。
ちなみに、この案件は大阪でしたが、広島でも、現在2件、司法書士の非弁の疑いがある案件の調査を行っています。