先日、こんな報道がありました。今日はこれについてまとめたいと思います。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190731-00000503-san-soci

非弁提携とは

弁護士は一般の業種と違い、紹介料の授受が法律上禁止されています。内規ではなく弁護士法で、違反には刑事の罰則もあります。弁護士が紹介者に支払うのも、依頼者が紹介者に支払うのも禁止です。我々はこのようなお金のやりとりがある事案を「非弁提携」と呼んでいます。
この定めはかなり厳格で、例えば従量制のネット広告(問い合わせ件数や契約件数に応じて手数料を支払うもの)も、禁止対象になると解釈されています。

過払事件における司法書士の業務範囲

特定司法書士は、140万円までの事件を取り扱うことができるとされています。過払案件で何が140万円かというのは一つの問題なのですが、最高裁判例によれば、約定債務の総額、過払金の総額のいずれかが140万円を超えたら司法書士は取り扱うことができないとされています。
この点について詳しくはこちら

したがって、利息制限法に基づく引き直し計算をして過払額が140万円を超えた場合、司法書士は取り扱うことができないため、弁護士にあらためて依頼し直さないといけません。

ベリーベストの事案と紹介料

記事によると、このケースにおいて、ベリーベストは、事務委託料という名目で案件1件ごとに19万8000円を支払うという業務提携契約を大手司法書士法人と締結しており、実際に支払っていたということです。

そもそも私は、紹介案件に限定してその件数ごとに対価を一律に支払うということは、金額、名目を問わず、それ自体が紹介料といわざるを得ないと考えています。おそらく、非弁取締に携わっている人間の一般的な考え方だと思います。だからこそ、従量制の広告であっても非弁提携だという解釈になるのです。
したがって、事務委託手数料だから許されるという言い分は認められる余地がないでしょう。

高すぎる事務委託手数料

また、この事案では、事務委託手数料というにはあまりに高すぎることも問題の1つです。過払請求の報酬基準は事務所により様々ですが、ホームページで確認する限り、ベリーベストの報酬基準は2万円+20パーセント(訴訟の場合は25パーセント)のようです。
そうすると、140万円の報酬は30(訴訟外)または37万円(訴訟の場合ということになりそうです。
ただ、これは全額を回収した場合の金額になります。
私の場合は全件訴訟を起こして元金全額+提訴時までの遅延損害金までを回収するのが普通ですが、大々的に広告を打って多重債務事件を受任するタイプの事務所の場合、5~7割程度で和解するケースも多いと聞いており(ベリーベストやこの司法書士法人がどうかは分かりません)、仮に140万円の7割強である100万円で訴訟外で和解したとすると、22万円です。
つまり、「この「事務委託手数料」は、140万円分の報酬をほとんどまるまる渡す形になりかねません。記事では「19万8千円は司法書士報酬の平均額と比べても適正な対価」だと主張しているとのことなので、この金額は、司法書士が140万円自ら回収した場合に報酬として認められる額に相当すること自体はベリーベストも認めるのでしょう。

それはすなわち、弁護士が事件として全体を取り扱い、140万円を越える部分に相当する部分の報酬を自ら受け取る見返りとして、本来自分で回収することはできない140万円に相当する報酬を司法書士法人に渡すという約束をしたということに争いはないということです。これが紹介料の支払でなくて何でしょうか。

刑事告発相当案件では?

そう考えてくると、今回の事例は、きわめて悪質かつ証拠もしっかりそろっている案件だと言わざるを得ません。件数も多そうですし、正直なところ、懲戒どころか刑事告発相当案件ではないかと思っています。少なくとも広島で非弁・業務広告調査委員会で調査下案件で同様の問題があれば、私は委員会でそういう意見を述べると思います。

どんな内容であれ紹介と紐付けられた金銭を弁護士が紹介者に支払うと問題

なお、「事件を紹介された場合に名目はどうあれ紹介者に対して金銭を支払えば非弁提携である」という私の基準とは違い、Twitterで複数の方から「内容によるのではないか」というつぶやきがありました。
その多くは他士業やIT業者の連携に関連してのもので、連携が依頼者にとっても有用だという前提があるものでしたが、その場合でも、金銭の支払と照会が紐付けられており切り分けができていなのであれば非弁提携に該当するでしょう。有用性で法律は曲げられません。
ただ、それらの事例の多くは、制度設計をうまく行うことで、非弁提携にならずに有用性が享受できるのではないかと私は感じました。ややこしい話になるので詳述は避けますが、依頼者にとっても利益になる連携を行うのであれば、法律上の問題についても十分検討した上で制度設計をしてもらいたいというのが非弁に関する取締を行っている私の意見です。
依頼者、顧客の便宜の足かせになる場面が全くないとは私も思っていません。しかし、この辺りを全く気にせず行うためには、法改正をして紹介料を合法化するしかないと思います。しかし、有用性先にありきで紹介料を全面解禁することは、今でもなお大きな懸念があるといわざるを得ません。今の制度の中でどうやって行くか、という点を考えていくしかないのだと思っています。

この意見に対して、「悪貨は良貨を駆逐する」という観点、つまり、まじめな業者ほど尻込みしてしまいなりふり構わぬ業者が跋扈するという意見もありました。しかし、それを理由に基準を緩めるのは本末転倒でしょう。なりふり構わぬ業者はしっぽを出しますから、大事になる前に摘発する形で対応していくしかありません。