去年の12月に提訴した、というご報告をした、グループホーム松籟荘(北広島町社会福祉協議会が運営)の件ですが、本日松籟荘側が自分たちの責任を認めて一定の金銭給付をする形で裁判上の和解となりました。

事件としては、グループホーム(認知症の方が共同生活を送ることを前提とした高齢者福祉法上の施設)で、扉に施錠をしていなかったために、認知症の方が外出し、翌日水死体で発見されたという事件です。
このため、遺族の一部から依頼を受け、損害賠償請求訴訟を提起しました。
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松籟荘側は、過失の内容に関する細かい点では争いがあるものの、施設に責任があること自体は当初から認めていました。この結果、早い段階で和解の条件についての交渉を行ってきました。

こういった事件では、遺族の多くは、お金が欲しいわけではないのですが、裁判の制度としては金銭賠償以外に道がなく、損害賠償請求という形の訴訟を提起するしかないのです。

とはいえ、和解であれば、それ以外の内容を合意で約束してもらうことも可能です。そこで、金銭の支払とともに、再発防止策の検討と報告などをお願いしてきました。

そうしたところ、和解の過程で、北広島町社会福祉協議会は、松籟荘の運営を、他の社会福祉協議会が共同で運営する社会福祉法人に譲渡しました。
当方としても、不十分な運営をそのまま行われるよりはその方がずっといいと納得しています。

この問題の背景には、昨今(コロナ前)の慢性的な人手不足、特に介護業界では人手不足が顕著なため、過疎地域での労働力を確保することが困難なこと、その結果民間参入が期待できないこと、一方で、過疎地域の高齢化もまた深刻で、社会福祉協議会としては、地域の住民のニーズに応えて、人出が厳しい中でも介護系のサービスを運用せざるを得ないこと、といった問題が絡み合ってのことであり、その意味では、社協としても困難で悩ましい問題を抱えていたと思います。
しかし、だからといって、このような事故を発生するような杜撰な運用を行ってはいけません。
大変だとは思いますが、この地域に関わらず、責任を持った対応を行っていただきたいと思います。

なお、「遺族の一部」とありますが、本件では、相続人の一部(1人)だけが提訴する形となりました。こういった事件では、遺族が一丸となって提訴することが通常なのですが、今回一部となってしまった原因は、地元に居住している遺族は、社会福祉協議会に遠慮があるのか、一部の方しか提訴に至らなかったのです。
他の遺族のさらに一部は、単に自分たちが提訴しないだけでなく、提訴した遺族にも取り下げするように要求してくる状態で、村社会の闇を実感する事件でもありました。